日本語のアクセントの概要
こんにちは!ここでは日本語の「ピッチアクセント」について説明します。
ピッチアクセントという言葉を初めて聞いた方もいるかもしれませんが、ピッチとは高さのことです。日本語は、発音するときに、音を高く言うか、低く言うかがとても大切な言語です。
例えば、よく使われる例で、橋(はし)と箸(はし)の違いがあります。どちらも同じ「はし」と言う読み方ですが、それぞれのピッチアクセントは、橋(はし\)と箸(は\し)のように、異なります。つまり、日本語では、話すときに単語の音程の高い、低い、を正しく言わないと、間違った意味を伝えてしまうことがあるのです。
もちろん、橋と箸は意味が全然違うので、文脈で理解してもらうことはできますが、正しいピッチアクセントで話すことができれば、相手があなたの日本語を理解する負担は少なくなります。また、きれいで聞きやすい日本語になるため、面接や、お仕事などでの信頼度も高まると言えるでしょう。そのため、日本語を勉強するのであれば、ピッチアクセントの理解と、それを正しく言えるようになることは、とても大切だと言えます。
このページでは、日本語のピッチアクセントについて、具体的に説明をしていきます。ピッチアクセントについて知り、練習すれば、あなたの日本語力は必ず今よりも上達するはずです。
日本語の拍(モーラ)
日本語のピッチアクセントを理解するには、まず「拍(モーラ)」を知る必要があります。
拍とは、日本語を話すときのリズムの単位です。例えば、「あ」は1拍、「あい」は2拍、「あいう」は3拍と数えます。上記の拍はひらがなの数と一致していますが、大事なのはそれぞれの拍は大体同じ長さで発音されることです。例えば「あいう」の場合、「あ」が1秒、「い」が1秒、「う」も1秒かけて発音される感じです。(もちろん正確には全く同じ長さではありませんが、大体同じ長さで発音します。)
また、特殊拍と呼ばれる(っ、ー、ん)なども「あ」や「い」と同じように1拍として、同じ長さで発音されます。例えば、以下のような単語はそれぞれ、3拍、4拍、3拍で読まれます。
- きって(切手)3拍
- がっこう(学校)4拍
- ほんや(本屋)3拍
この「拍」と言う考え方を理解してから、次のアクセントの種類を見ていきましょう。
日本語のアクセントの種類
日本語のピッチアクセントは、主に次の4つのパターンに分けられます:
- 平板型(へいばんがた)
- 頭高型(あたまだかがた)
- 中高型(なかだかがた)
- 尾高型(おだかがた)
以下で、平板型、頭高型、中高型、尾高型のアクセントパターンについて説明します。
平板型:平板型は、無アクセントとも言われるパターンです。単語全体がフラット(flat)に、大体同じピッチ(音の高さ)で発音され、特定の音で急に低くなることはありません。平板型の例は、「さかな ̄」や「てがみ ̄」などです。
頭高型:頭高型は、最初の拍が他の拍よりも高いピッチで発音されます。つまり1拍目が高く、2拍目以降は、低くなります。頭高型の例は、「め\がね」や「レ\モン」などです。
中高型:中高型は、単語の中間の拍にアクセントがあるパターンです。単語の途中の拍で、急に低くなります。中高型の例は、「たま\ご」や「のみも\の」などです。
尾高型:尾高型は、単語の最後にアクセントがあるパターンです。単語だけで見ると平板型と似ていますが、単語の後ろに助詞がついたときに、平板型と違う発音になります。例えば、「いもうと\」は尾高型の単語ですが、「いもうと\」だけ発音された場合、平板型と同じように発音されます。しかし、「いもうと\」の「と\」にアクセントがあるので、「いもうと\が」や「いもうと\は」のように助詞がある場合、「と\」までは高くて、助詞からは低く発音されるようになります。尾高型は他に、「おとうと\」や「はな\(花)」などがあります。
平板型と尾高型について「はな」と言う言葉を例に、もう少し説明します。
- 「はな ̄が」鼻が(平板型)
- 「はな\が」花が(尾高型)
どちらも「はなが」という文字は同じですが、アクセントはそれぞれ平板型と、尾高型になっています。1の方は、平板型で、「な」にアクセントはないので、「な」で低くならずに「が」まで高い音で発音します。一方で、2の方は、尾高型で、「な\」にアクセントがあります。そのため、「はな」まで発音したら、「が」が低く発音されます。
このように、日本語のピッチアクセントには4つの種類があり、単語によって決まっているため、日本語で単語を学習するときには、読み方と意味だけでなく、その単語のアクセント型まで覚えて、言えるようにしておくことが重要になります。
アクセントの特徴
上記、アクセントの種類をもっと理解するために、次の2つのルールを覚えておきましょう。
- ルール1: 一度下がったら低いままになる(上がらない)
- ルール2: 1拍目と2拍目は違う高さになる
1つ目のルールは、1つの単語の中で、アクセントの後で一度低くなったら、そのあとは低いままな点です。例えば、「ト\マト」と言う単語では「ト\」で下がっていますが、下がった後に、「ト\マ/ト」のようにもう一度上がらないと言うことです。
2つ目の1拍目と2拍目は違う高さになる、と言うのは例えば頭高型は「め\がね」のように1拍目の「め\」が高くて、次の「が」が低くなります。つまり、1拍目と2拍目は必ず高さが異なります。頭高型の場合は、必ず1拍目が高くて、2拍目以降は低くなります。
そして平板型、中高型、尾高型も同様に1拍目と2拍目の高さは異なります。例えば平板型の「さかな ̄」を見てみましょう。「さかな ̄」は最後に「 ̄」の記号が書いてあるので、「さ」「か」「な」の全てが同じ高さで、どれも高いと思われるかもしれませんが、実は「1拍目と2拍目は違う高さになる」と言うルールに従って、1拍目は低いところから始まります。なので実際には、「さ/かな ̄」のようなピッチになります。低いところから「さ」を言い始めて「か」で高くなって、「な」も同じように高く発音します。
ただし、特殊拍(っ、ー、ん)などが2拍目にある場合だけ、1拍目が高いところから始まるので、1拍目と2拍目が大体同じ高さになることは気をつけましょう。例えば、次の例では、「こうこう」の1つ目の「こう」は、どちらも同じ高さで高いピッチで発音されます。「べんきょう」の「べん」も2つとも高いピッチで発音されます。
- こうこう(高校)
- べんきょう(勉強)
しかし、基本的には、平板型、中高型、尾高型は、1拍目が低くて、2拍目が高くなります。
この2つのルールを知っていると、4種類のアクセントを覚えやすくなると思います。
アクセントを調べる方法
日本語学習者が単語のアクセントを調べるには、アクセント辞典を使うのが一般的です。アクセント辞典には、大きく二種類、オンラインアクセント辞典と紙のアクセント辞典があります。
オンラインアクセント辞典は、OJAD(Online Japanese Accent Dictionary)のサイトがあります。OJADは日本語学習者向けに作られていて、そこでは約9000語の名詞や、約3,500語の用言(動詞、い形容詞、な形容詞)のアクセントを調べることができようになっています。OJADではアクセントが知りたい単語を、Googleで調べるときのように検索バーに入力するだけなので、簡単に使うことができます。しかし、収録してある単語の数が少ないため、知りたいアクセントの単語が見つからないことも多いでしょう。
中級や上級の日本語学習者で、知りたいアクセントの単語がOJADにないことが続いたら、紙のアクセント辞典を手に入れることをおすすめします。アクセント辞典は数種類ありますが、NHKが出版している日本語発音アクセント新辞典がおすすめです。
こちらの辞典なら多くの単語のアクセントが載っていますが、もしこの辞典を見ても、知りたいアクセントが見つからない場合は、Youtubeでその単語を検索したりして、日本人がその単語を言っているところを見るのもおすすめです。その場合、Youglishと言うサイトの日本語版を見るのがおすすめです。ここでは、単語を入力すると、Youtubeの中で、その単語が実際に発話されている例をたくさん見ることができます。アクセント辞典に載っていない単語でも、日本人が実際にその単語をどのアクセントで発音しているか聞くことで、理解し、真似することができるようになるのでとても便利なサイトだと思います。
東京アクセントと地方アクセント
さて、上でYoutubeでアクセントを聞いてみる話をしましたが、実際にYouglishなどで日本人が話しているの聞くと、人によって違うアクセント言っていることに気づくかもしれません。
「あれ?1つのアクセントは1つに決まっているんじゃないの?」と思った方がいると思いますが、実はアクセントは、地域差や年代差などがあります。つまり、日本語が話されている場所によって、または若い人か年配の人かによって、同じ単語でも違うアクセントで話すことがあるのです。例えば、くつ(靴)と言う単語は、次のように東京と大阪でアクセントが違います。
- くつ\(東京アクセント)*尾高型
- く\つ(大阪アクセント)*頭高型
この違いは、東京アクセントと地方アクセントの違いなどと呼ばれています。では、日本語を勉強している学習者は、どのアクセントを勉強すればいいのでしょうか。もちろんそれはあなたがどこに住んでいるかや、日本語を使って何をしたいかにもよるかもしれませんが、一番基本的で標準と言われるアクセントが関東方言の一つである、東京アクセントです。つまり、東京の人が話しているアクセントですね。
例えば、もしあなたが大阪の大学に留学に行ったり、大阪出身の恋人がいる場合などは、大阪のアクセントを話せるようになったり、聞けるようになることが大事になるかもしれません。しかし、もしそういった特別な理由がない場合は、東京アクセントで勉強しておくことをおすすめします。それは上記のアクセント辞典が東京アクセントで書いてあるのも1つの理由ですし、東京アクセントは、一般的なメディア(テレビ、ラジオ、映画など)で主に使用され、日本全国で広く理解されるアクセントだからです。
以上の点から、日本語学習者は特別な理由がなければ、初めは標準的なアクセント(東京アクセント)を学び、その後で必要なら特定の地域のアクセントについて学ぶという順番がいいでしょう。
アクセントの練習方法
では、正しいアクセントを身につけるにはどんな練習をすればいいでしょうか。以下に、練習方法やテクニックを提供します。
- まず、アクセントの理論を理解する:最初に、日本語のアクセントパターンの理論的な知識を学ぶことが重要です。日本語のアクセントの基本ルール、それぞれのパターンの特徴、語形変化や単語の組み合わせによるアクセントの変化などを理解しましょう。
- 自分で発音して練習する:アクセントを習得するには、繰り返しの練習が必要です。すでに知っている単語でも、正しいアクセントを辞書で確認して、言えるようにしましょう。
- 音声教材を聞く:日本語のアクセントを習得するには、実際の発音を聞くことが不可欠です。音声教材やオーディオを含む教科書、Youtube、ポッドキャストなどを聞いて、「あ、今この単語は頭高型で発音されたな」など、意識的にアクセントを聞くようにしましょう。
- 音声教材でシャドーイングをする:シャドーイングは、日本語のリスニングとスピーキングの両方を同時に練習できる効果的な手法です。これは、スピーカーの発言をすぐに繰り返す練習で、ピッチアクセントの習得にも役に立ちます。
- ネイティブスピーカーからフィードバックを得る:可能であれば、ネイティブスピーカーや日本語の教師からアドバイスをもらいましょう。アドバイスをもらえる人が周りにいない場合、italkiなどで先生を探してみるのもいいですし、projapaのような、発音のアドバイスをもらえるサービスもあります。
アクセント別単語リスト
平板型:
わたし ̄(私)、びょういん ̄(病院)、がくせい ̄(学生)、だいがく ̄(大学)、しゃしん ̄(写真)、いす ̄(椅子)、つくえ ̄(机)、とけい ̄(時計)
頭高型:
で\んき(電気)、か\さ(傘)、じ\しょ(辞書)、カ\メラ、テ\レビ、きょ\う(今日)、ご\ぜん(午前)、ご\ご(午後)、い\ま(今)、あ\さ(朝)、け\さ(今朝)
中高型:
せんせ\い(先生)、ひこ\うき(飛行機)、としょ\かん(図書館)、おと\うさん(お父さん)、おか\あさん(お母さん)、げつよ\うび(月曜日)、しんか\んせん(新幹線)、ゆうび\んきょく(郵便局)
尾高型:*助詞の「が」を足しています
き\が(木が)、じ\が(字が)、いぬ\が(犬が)、うた\が(歌が)、かみ\が(紙が)、にく\が(肉が)、はな\が(花が)、へや\が(部屋が)、やま\が(山が)、まち\が(町が)、みせ\が(店が)、あした\が(明日が)、やすみ\が(休みが)、いもうと\が(妹が)、おとうと\が(弟が)